高垣楓「あなたがいない」
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78: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/19(土) 15:35:31.72 ID:+7YhSCXJ0

「……あの、先生」
「はい」
「最近、楽しく感じていないんです……いえ、仕事のことではなくて、お酒のことで」
「ほう、高垣さんはお酒をたしなまれるんですか。うらやましいですね、私はさっぱり呑めないので」
「まあ、周りのお友達と比べて、ちょっとだけ、お酒が呑める程度ですけど」
「ほうほう。それでもうらやましいです」

 私の口が、私が思いついたままのことを、ストレートに出していた。

「私、お酒をたしなむことが好きで、そうですね……お酒のためにお仕事をさせてもらってると言っても、大げさじゃないな、なんて思ってたんです」

 先生はにこりと微笑み、私に続きを催促した。

「それが、このところ。お酒をいただいても美味しく感じなくて、いえ、味すら感じないこともあって……なにより」
「なにより?」
「お酒をいただくたびに、ああ、幸せだなあって。そう思っていたはずなのに」

 私は、思い出してしまった。

「お酒が、楽しめないんです……楽しめないん、です」




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