高垣楓「あなたがいない」
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55: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:40:24.84 ID:QGubcxXe0

 どうしてしまったのだろう、私は。
 Pさんが亡くなった衝撃で、食欲が落ちているのだろうか。
 そういう分かりやすい理由なら、もっと打ちのめされた気持ちになってしかるべきものなのに、私はそこまで悲しくなれない。
 ちひろさんの悲嘆に暮れた顔を思うたびに、私は薄情なのかしらと訝ることもしばしばだった。
 決してそんなつもりはない。あの時私は確かに、泣き疲れて眠ってしまうくらい泣けたのだ。
 そして、Pさんがベターハーフであったと、気付いたはずだ。

 ところがどうだろう。
 あれから半年が過ぎ、私は仕事にかまけてPさんを忘れようとしているのではないか。そんな馬鹿なことを考えることが、たまにある。
 忘れられるはずもないと思う気持ちと、実はそれほど痛みに思っていないのではという疑念。
 矛盾を抱えていても私は、なにかアプローチしようとせずただ立ち竦んでいるだけじゃないのかしら。
 アイドルとしての自分を一番に考えるべきところで、私は思考を浪費しているような感覚に囚われていた。
 ことことと鍋から小気味いい音が聞こえてくる。火を止め、小鉢に煮物を取り分けた。




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