198: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:37:23.52 ID:17bnaLyc0
翌日。私は社長室へ向かう。
「社長さん」
199: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:37:50.09 ID:17bnaLyc0
「P君が亡くなったのは、その翌日だったのです……彼はその自称父親に、追い詰められていたのだろうと、思います」
どれほどのプレッシャーを、Pさんは感じていたのだろう。
それをおくびにも出さず、彼は私のプロデュースを続けていた。
200: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:38:30.31 ID:17bnaLyc0
季節は、移ろいゆく。
Pさんがいなくなって、二年と半年。私はテレビの中で、歌っている。
「ありがとうございました」
201: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:38:59.90 ID:17bnaLyc0
いつもの挨拶。でも今は、少しだけ違っている。
「ところで楓さん」
「はい?」
202: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:39:28.16 ID:17bnaLyc0
「そう言えば、楓ちゃん」
夜。いつものイタリアンバルで、瑞樹さんとちひろさんと一緒にお酒をたしなんでいた。
203: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:39:55.32 ID:17bnaLyc0
「ただいま」
誰もいない部屋。この暗さにももう、慣れた。
この前までちひろさんと一緒に料理したり、ゆっくりと話し合ったり。あるいは。
204: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:40:30.20 ID:17bnaLyc0
何度も何度も読み返す、手紙。
読み返せば、悲しみが襲ってくる。自傷行為と言われても仕方ない。だけど。
こうして傷を負うことで、彼を忘れずにいられるのなら。
私は意味のない自傷を、繰り返す。心は未だ、歪んだまま。
205: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:40:58.51 ID:17bnaLyc0
Pさん。私は。
アイドルでいられていますか?
私で、いられていますか?
206: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:41:25.02 ID:17bnaLyc0
朝が来る。
私は。
207: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:41:52.24 ID:17bnaLyc0
「あなたがいない」
(了)
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