羽川翼「それが……我が主人のお望みとあらば」阿良々木暦「決まりだな」
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:01:55.87 ID:lUuaoiGOO
「儂と同じく、従僕にも食事が必要だ。無論、断食しても死なんがいずれは正気を失う。さあ、どうするつかもりかの? 従僕の従僕よ」

楽しげに問いかける吸血鬼。悪意が伝わる。

「私が食料を見繕います」
「ほう? どのようにして選別する?」
「人類の敵を私が見つけ……主人に捧げます」

覚悟を以って宣言すると、これまで沈黙を保っていた主人が重々しく牙の生えた口を開いた。

「僕の眼には、お前こそが人類の敵に見える」

その瞬間、私は怯え、竦みあがり、歓喜した。

「あはっ。阿良々木くん、怒った?」
「怒りというよりも、失望に近いな」

主人から失望される。それは悲しくも光栄だ。

「私はこれから沢山沢山、手を汚すよ。どれだけ阿良々木くんに失望されても、軽蔑されてもへっちゃら。私が堕ちれば堕ちるほど、闇に染まれば染まるほどに、私の主人の威光は増す」
「羽川……僕はそんなお前を見たくない」
「私は見て欲しい。汚れていく自分を阿良々木くんに見て欲しい。いえ。見せつけてあげる」
「っ……羽川っ!」

主人の拒絶が伝わる。立ってられず屈服する。

「お前を眷属にしたのは……間違いだった」
「間違い、なんかじゃないよ……」

額を地面に擦りつけながら、涙を流して笑う。

「阿良々木くんは優しいから……その優しさは正しくはないけど美しいから……だから私があなたを、我が主人を、王にする。してみせるっ!」

顔を上げ、主人の憐みの眼差しを真っ直ぐ見返して、私は微笑む。彼は目を逸らさなかった。


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