51:名無しNIPPER[saga]
2021/11/18(木) 23:05:10.39 ID:kEvTCSbVO
「私、アイドル始めるんだ」
少し恥ずかしそうに、でもそれ以上に嬉しそうでもあった。
「あ、アイドルっていってもその、本当のアイドルってわけじゃなくて、なんちゃってなんだけどさ……」
そう慌てて言い足して、彼女は事情を説明してくれた。
アスタというコピーユニットに加入すること。「ささし」のことを推していて、彼女みたいになりたいという理想。歌は歌わずにダンスだけなのにこんなに難しいんだから、アイドルって凄いという畏敬。
私が承認欲求のためにアイドルのオーディションを受けたとは恥ずかしくて口にできなくなるほど、彼女は「アイドル」に憧れていた。
少なくとも、私なんかよりねるの方がよっぽどアイドルになるべきだと思うくらいには、彼女は嬉しそうに語っていた。
「そのうちステージとかもあると思うから、良かったら遊びに来てほしいな」
そう言って私の顔を覗く彼女は、とても輝いて見えた。アークスの先輩たちにも負けないくらい、キラキラしているように見えた。
だからこそ、私は口にすることができなかった。
「私もアイドルになるんだ」という一言を。彼女のキラキラの前では、私のその言葉は嘘のように思えたから。
今になって思うと、それこそが分かれ道だったのかもしれない。
「栞たちにも言いたかったんだけどさ、やっぱりちょっと恥ずかしくて。彩なら茶化さずに聞いてくれそうだから」
付け足された一言に心がチクッと痛んだのは、自分自身からの最後の警告だったのかもしれない。
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