僕「…幻覚が見えるんです」
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29:emanon
2020/09/01(火) 23:41:48.41 ID:p7+LgWTZ0
橋本さん「ん?な、な、なんだ、君?その、馬の被り物は、なんなんだ?」

馬子「心臓移植はそもそも適合するドナーを探すだけでも時間がかかるんだ。現代社会の平均待機期間は653日。なおかつ脳死状態で、加えて血液型が一致した人間じゃなければならない。年齢も体格も体重も慎重に評価されるのに、一週間やそこらでドナーが見つかる訳がないじゃない…」

橋本さん「あれは偶然みたいなものだよ。まさに奇跡だ。停電が起きて、急いで復旧作業をして。そんなトラブルがあったにも関わらず手術を成功させて…、お医者さんには頭が上がらないね。ああ、君がこうして元気に動いている姿を見れて僕は安心したよ。本当に良かった」
以下略 AAS



30:emanon
2020/09/01(火) 23:44:55.09 ID:p7+LgWTZ0
僕「はっ!は、橋本さんっ!じ、実は、入院してるクラスメイトがいて…。ほら、ずっと入院しているから、ふさぎ込んじゃって、なんとかその子を楽しませようと思って、笑える小道具を持って来たんですよ。馬の被り物とか、笑えるでしょう?ははは…」

橋本さん「…ふう。いや、びっくりしたよ。まあそういう事なら余計な口出しだったね。ごめんね」

僕「いえ、すみません、こちらこそ」
以下略 AAS



31:emanon
2020/09/01(火) 23:48:01.94 ID:p7+LgWTZ0
橋本さん「辛かったら、きちんと大人に言いなさい。黙ってて良い事なんかないからね。自分の中で問題を抱え続けるという選択肢は、あまりにも自分勝手過ぎる。知らないからこそ幸せ、そういう言葉があるかも知れないけれど。君が死んだ時、周りがどれだけ辛い想いをするか、周りにどれだけ迷惑をかけるか、それが分かるなら決して一人で抱え込もうとはしない筈だ。僕は、何も知らずに息子が死んだら凄く後悔するよ…」

僕「そうですね…」

馬子「…橋本さん、あなたが入院していた部屋の番号は?」
以下略 AAS



32:emanon
2020/09/01(火) 23:53:26.53 ID:p7+LgWTZ0
馬子「嫌いよ、ああいう人間」

僕「…橋本さんは悪い人じゃないですよ」

馬子「黙って良い事なんかない?はあ?そういうのは、誰にも言えない程の痛みを味わった事がない、頭が最高にハッピーな人間が口にできるクソみたいに感情のこもってない言葉なんだよ。なんであんたに相談しないか分かるか?話す価値のない人間だからだよ。あんたにその価値があるなら、とっくのとうに話してるさ。死にたいって気持ちは、死にたいって痛み抱えた人間にしか、分からないんだよ。
以下略 AAS



33:emanon
2020/09/01(火) 23:56:39.99 ID:p7+LgWTZ0
馬子「さて…、」

僕「到着しましたけど。普通の病室ですよ、501号室…」

馬子「何か思い出す事は?」
以下略 AAS



34:emanon
2020/09/02(水) 00:01:41.71 ID:Ind2CwOR0
馬子「…いや、ここの壁だけ塗りが新しい。病室は他と同じなようだが、ん?なんだ?何を隠すために塗り替えたんだ?…壁の汚れ?違う。焼け跡か? これは?…使用禁止のコンセント…?」

先生「嗅ぎ回るのはそこまでにして下さい」

馬子「…。ごきげんよう」
以下略 AAS



35:emanon
2020/09/02(水) 00:04:55.08 ID:Ind2CwOR0
馬子「…そう。じゃあ聞くわ。ドナー提供者の名前は、秋野じゃないかしら?」

先生「…ほう」

僕「…馬子さん、っ、どういう事ですか?いや、どうして秋野の名前がここで出てくるんですか?」
以下略 AAS



36:emanon
2020/09/02(水) 09:43:58.79 ID:j7vhrqUQO
馬子「秋野千波が知り過ぎていた理由は、彼女の身内が、君の心臓移植の相手だったからだ。やけに親密過ぎるのも恐らく君のベッドと、近かったから」

僕「…僕の隣は橋本さんでしょうっ?」

馬子「橋本はこう言った筈だ。数日で移植の話が決まって緊急手術になったから。顔を合わせたのは数日だった。彼は、君の手術の数日前に入院して来た。裏を返せば、その前に誰かがいた、という事だろう?
以下略 AAS



37:名無しNIPPER
2020/09/02(水) 09:46:49.03 ID:j7vhrqUQO
先生「…なるほど、君の噂はかねがね聞いていたが…。もはや、ここまで分かっているのか。それならば、私の口から答えた方が早いですね。恐らく、君たちが話している幻覚の女性の正体は秋野茜、秋野千波の姉にあたり、君の心臓のドナー提供者です。………彼女は画家として有名でした。しかし交通事故で利き腕である右腕が動かなくなってしまった。後遺症の麻痺です。それ以降、秋野茜の体調は悪くなる一方でした。絵の才能を期待されていた分、日が経つに連れて描けなくなっていく、期待に応えられなくなってしまっていく。理想と現実のギャップに、秋野茜は相当のストレスを負っていたようです。病院側の診断でも、食事を摂取しなくなる拒食症や、睡眠薬、抗うつ剤の乱用など薬物依存症の前触れを確認できました。秋野茜が搬送されて来たのは、6月の上旬の事です。…君と秋野茜は隣同士のベッドになった訳ですが、まあ、お互い共通の話題があったのでしょう。非常に仲が良く見えましたよ」

僕「秋野、茜、さん…」

馬子「覚えていない?」
以下略 AAS



38:emanon
2020/09/02(水) 09:50:15.03 ID:j7vhrqUQO
馬子「あなたは心臓の病気が悪化し心臓移植が必要になった。だがドナー提供者を知ったあなたは心臓移植を拒んだ。だって移植をしてくれる相手は、あなたがこの病院に来てから最も心を許した人だったから。秋野茜から心臓移植を受ければ、もちろん彼女は死んでしまう。大切な人を、間接的に殺してしまう形となる。あなたは心臓移植を拒んだ。手術のため無理やり麻酔を打とうとする医者たちを遠ざける必要があった。とっさにあなたは武器を手にした。一番近くにある武器よ。ええ。例えば、林檎の皮を剥くために使う凶器とか…」

僕「果物ナイフ…」

馬子「そう。ナイフを振り回して牽制する。でも次第に追い詰められてしまう。あなたは何処まで行っても袋小路だという事に気が付いてしまう。逃げられない。逃げられないのならば、自[ピーーー]ればいい。自殺をすれば移植手術は中断だ。でも首を切って死ぬ方法は取れなかった。仮に一刺しで[ピーーー]なかった場合、ここは病院だ、直ぐに治療されてしまう。じゃあどうするか、あなたは手にした果物ナイフを刺し込んだ、コンセントに」
以下略 AAS



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