7: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:26:29.63 ID:S7yVE8bX0
「これ、二人分の荷物なんだよね」
「そうだな」
「一週間、旅するみたいな量だね」
「笑っちゃうよな」
「ね。ばかみたい」
顔を見合わせ笑い合って、私達は車に乗り込む。
いつも乗っている事務所の車よりも一回り大きなこの車は、視線の高さがまず違っていて、この時点で既に非日常感に溢れていた。
「ねぇ。最初はどこ行くの?」
カーナビ上に表示された時刻は午前七時を少し過ぎたくらい。どこかの施設に入ろうにも、ほとんどの施設はまだオープンには時間がある。
しかし、彼から返ってきたのは「何言ってんの」という呆れたような声だった。
「今日は一日、凛のしたいことをするんだってば」
そういえば、そうだった。
全ての決定権を委ねられるというのは、自由なようでいてなかなか難しいな、と思いながら頭を回す。
「プロデューサーは朝ごはん、食べた?」
「凛は?」
「え。私はまだだけど……」
「じゃあ、俺もまだ」
「何それ」
「凛が食べてるのに食べてない、って言ったら凛は俺のために朝ごはん食べに行こう、って言うだろ」
「そこまで気を遣われると逆に気持ち悪いんだけど」
「ひどい」
「まぁいいや。じゃあ、とりあえず朝ごはん!」
「具体的には? 何を?」
ここで私はまた悩んでしまう。
これと言って、食べたいものは決まっていなかったからだ。
「……んー。ハンバーガー、とか?」
「どんな?」
プロデューサーはどこまでも私の意向に従うつもりのようで、詳細までもを訊ねてくる。
「じゃあ、ハワイアンなやつ」
「よし。その調子で頼むよ」
にやりと彼は笑って、ウィンカーを出して車線を変える。
どうやら心当たりがあるらしい。
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