5: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:24:43.61 ID:S7yVE8bX0
「じゃあ、凛。何かリクエストある?」
「急に言われても、ぱっと出てこないよ」
私の返しに、彼はむーと唸り顎に手を当てる。
正直に言えば、私としてはどこへ行くか何をするかはあまり重要ではなかったりするのだが、私のために頭を悩ましてくれているのは心地が良いので、それは言ってやらない。
「あ。だったらこういうのはどうですか?」
ちひろさんがプロデューサーに耳打ちをする。
私に届かないふたりの秘密の会話が終わると、プロデューサーは「それだ! それです!」と食堂に響き渡る声で言った。
「え。何? なんなの?」
「一日、凛のやりたいことをしよう!」
予想もしていなかった斜め上の提案に、一時ぽかんとしてしまう。
数秒してその意味が取れ、私は思わず笑ってしまった。
「なんでも?」
「そう! なんでも!」
「いいけど。途中でギブ、みたいなのはやめてよ?」
「もちろん。武士に二言はない」
「武士なの?」
「武士ではない」
「……はぁ」
私とプロデューサーのこんな調子のおばかなやり取りを見て、ちひろさんはただただ愉快そうにくすくすと顔を綻ばせていた。
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