2: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:22:36.59 ID:S7yVE8bX0
〇
一人取り残され、手持ち無沙汰になった私はなんとなしに目の前のパソコンを操作する。
パソコンはすみやかにスリープ状態から立ち上がり画面が点灯し、パスワードの入力を促す表示が出た。
さて、と腕を組み少し考えたのちにキーボードを叩いてみる。
ぜろ、はち、いち、ぜろ。
気まぐれに私の誕生日を入れてみたところ、すんなりログインが完了してしまった。
「え」
慌てて周囲を見渡す。幸いにも誰かに見られていたということはないようで、ひとまずは安心した。
自身の誕生日を真っ先に入力してしまった自意識過剰を棚に上げ、相変わらず、あの男は私のことが好きすぎるな、と思った。
モニター上にはパソコン用のメールアプリケーションが表示されていて、そこからプロデューサーの予定表を開く。
彼がスケジュールを組む際によく使うのを見ていたので、閲覧方法は知っていた。
ずらりと表示された彼のひと月分の予定を眺めていると、その多忙ぶりがよくわかる。
よくこれで死なないものだと思うけれど、彼が多忙ということは、私もさほど変わらないスケジュールの埋まり具合であることを思い出す。
そして、そのような中にあっても、ぽつりと空白になっている日付を私は見つける。もちろん、お盆休みということもあるのであろうが、数少ない彼の休みの中で唯一、予定が入っていることを示すラベルが貼られていた。
この予定表は他の社員の人たちも閲覧できると聞いている。
であるならば、わざわざ休みの日に私用の予定を書くとは思えない。
なんだろう。
好奇心に負け、私はそのラベルをクリックする。すると、そこには『凛誕生日』と出た。
はぁー、と長いため息が漏れる。
これは、もう、私のことが好きすぎるというか、ただのおばかだ。
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