79: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/14(金) 16:46:26.87 ID:eY+H6i2KO
魔王が急に、匙を止めた。
「……いるな」
「追っ手?」
「多分。視線を感じる」
私も辺りを見渡した。……確かに、食堂の片隅に1人、明らかに常人じゃない魔力の人がいる。彼か。
「どうするの?」
「直接絡むまでは無視だ。宿泊する予定のイスラフィルで仲間が待ち伏せしているかもしれないが、その時は殺るしかないな。
……小娘、本当に戦闘向きの魔法はないのか」
「戦闘?私も戦えというの?」
「当然だ。昨晩のデイヴィッドみたいなのがいたら、俺一人だけでは守りきれん」
渋い顔で返された。
でも、当然私には戦った経験なんてない。さらに言えば、精霊魔法はあまり戦闘向きの系統ではないのだ。
考えろ。本当に彼に頼りっきりでいいのか……
「あ」
あった。彼を支援できそうな魔法で、私が使えそうなものが。
私は小さく頷いた。
「一応」
「相手はチンピラじゃない。一昨日の間抜け2人も、一応訓練は受けていたはずだ。本当に通用する程度のものなんだろうな?」
「実際に試したことはないの。でも、自信はそれなりにある」
「……信用するからな」
「助けられてばかりじゃ、悪いもの」
魔王が苦笑した。
「その意気込みやよし、だな。腹八分目だが、ひとまず外に出……」
魔王の視線が例の男に向けられた。男は、こっちに向かってまっすぐ歩いてくる。
どうしよう、と思っているうちに彼は私たちの所に来た。
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