樋口円香「──誠意を見せていただきましょうか」
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11:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:38:51.25 ID:YkNVrYJ6o
ヒュッと背筋が伸びる。そこでようやく意識が思考の内側から外側へと戻ってきた。事務所の入口には今まさに考えていた樋口円香が立っていた。円香は「ふぅ」、と呆れたように溜め息を吐きだしてから、「仕方ない人」、と呟きながらソファに腰を掛けた。ふわりと隣から甘ったるい匂いが届いた。
それから左肩にふわふわの赤みを帯びた毛髪と、ほんの少しの体重がかかる。「もたれているわけではないです、少し置いているだけです。勘違いしないでください」、と円香が睨みを効かせてくるので、きっとそのとおりなんだろう。
「ああ、少し休憩し過ぎていたよ。ありがとう、円香」
12:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:39:18.22 ID:YkNVrYJ6o
「それだけですか」
「それだけって?」
13:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:39:45.76 ID:YkNVrYJ6o
円香はソファから立ち上がり、事務所から外へと向かった。
……こういうところだ。違和感というか、おかしいというか。円香のことがわからない。もちろん、元々円香のすべてを理解できているわけではなかったし、そんなことができるとも思っていない。それでも自分なりに理解しようとしてきて、最近ではやっと円香のことを少しだけわかってきたかもしれないと思っていたが、振り出しに戻った気分だった。
少しでもわかってきた、なんて思っていたこと自体がそもそも俺の思い上がりだったのかもしれないけど。
14:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:40:19.73 ID:YkNVrYJ6o
コトン、コトン。
卓上にカップが二つ置かれた。円香がコーヒーを淹れてきてくれたようだ、ホットを買ってきてくれたのだろう、黒色のそれからは白い蒸気がユラユラと上っている。
「コーヒー、ブラックでしたよね」
15:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:40:46.62 ID:YkNVrYJ6o
う……失敗したな。今のは完全に、言葉の選択を誤った。礼儀だから言っただけ、なんて言われて良い気をする人間がいるはずもないというのに。
「──……そんなあからさまにへこんで、同情でも引きたいんですか。残念ですが、私はそれほど単純ではありません。
16:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:41:13.57 ID:YkNVrYJ6o
「大したことないですよ。ただ──あなたは少しだけ、私にてのひらを貸せば、それだけで十分ですから」
17:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:42:17.37 ID:YkNVrYJ6o
おわり。
18:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 23:19:36.87 ID:REBq6RqDO
一秒間になでなでを30往復すればいいのですな
19:名無しNIPPER[sage]
2020/08/03(月) 19:44:53.57 ID:qUqY15tTo
おつおつ
こんなにデレていいのか円香ッ!
20:名無しNIPPER[sage]
2020/08/10(月) 19:51:36.68 ID:/h7AUsa60
円香……円香……
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