6: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:51:56.93 ID:dze2zfkn0
「プロデューサー、ワタシがお化け苦手なの知ってるよネ? どうしてイジワルするの?」
とある一般プロデューサーの名誉のために弁明しておくが、彼は決して可愛いエレナに意地悪をするためにこのオファーを告げたわけではない。
確かに今の彼女はただでさえ柔らかい頬が持ち上げられて寄り上がりプニップニな状態に仕上がっているだけではなく、
7: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:53:43.05 ID:dze2zfkn0
プロデューサーは決して島原エレナに意地悪することを生業としているのではなく、
あくまでアイドルとして仕事の依頼を受けたため、本人に告げたに過ぎないのである。
故に、例え過去に765プロ劇場のみんなでホテルに肝試しに行ったときにエレナがお化けに怯えている姿を知っていたとしても致し方ないことなのである。
これは不可抗力なのである。
8: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:54:33.93 ID:dze2zfkn0
「アッ‼ じゃあせめて、コトハとメグミと一緒に行かせてヨ‼ 二人と一緒ならまだ何とかなるかもしれないし…」
「お生憎様。その二人は当日別の仕事が入ってしまっているんだ」
「えっと、じゃあミヤとか…」
「美也も外に出ちゃってるなぁ」
9: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:55:44.15 ID:dze2zfkn0
「ごきげんよう」
「タカネ‼ おはよー♪」
「エレナ、おはようございます」
「あ」
10: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:56:41.15 ID:dze2zfkn0
そのまま「そうだ」と分かりやすく両の手をポンと叩いた。
急なテンションの変化に彼自身の喉が驚き、おかしなタイミングで声が裏返っていた。
「たかネがアいてるみタい」
11: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:57:42.53 ID:dze2zfkn0
「プロデューサー…?」と尋ねた貴音の顔色と声色からは何も感じ取ることが出来なかった。
ただ、何かをプロデューサーに尋ねていることだけが伝わった。
エレナの顔は頼れる同僚を見つけた喜びで満ち溢れている。
12: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:58:37.14 ID:dze2zfkn0
「プロデューサー…」
貴音は再度呟いだ。
二度目の言霊(ことだま)には葛藤と懇願が込められていた。
13: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:59:27.18 ID:dze2zfkn0
プロデューサーは四条貴音が怖いものを苦手だということを知っていた。
つまり、怖がっているリアクションを求められる肝試しの撮影においては適任と言える。
そして、プロデューサーは島原エレナがそのことを知らないことも知っていた。
14: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:01:16.01 ID:dze2zfkn0
【3】
ズルズル。ズズズ。
ズズ。
15: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:02:12.02 ID:dze2zfkn0
まだ時間は午後三時。
外では太陽は燦燦(さんさん)と降り注ぎ、風通しの良い室内に居ても首元はジンワリと汗ばむくらいだ。
明るく爽やかな陽気であり、このあと肝試しが控えているとはまったく考えられない天候だった。
16: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:03:13.87 ID:dze2zfkn0
今回のロケ地は山深くに佇む廃病院。
呼吸器系の患者の療養を目的として空気の綺麗な環境に立てられた病院であった。
しかし、まるで患者を閉じ込めるかのような陸の孤島となっていたことと、特殊な症例の患者を多く受け入れていたことで良からぬウワサが流れ始めてしまった。
このウワサをどこからか聞きつけた患者が脱走を試みたり、治療に対して抵抗したり、非常にヒステリックな環境となってしまった。
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