22:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:20:38.69 ID:qe4+sBJv0
「ハネ……」
「……ネおねえちゃ……」
薄く光が刺す方向から声が聴こえてくる。
薄目を開けると、目の前にひらひらと白いものがはためいている。
「ヨハネお姉ちゃん……?」
「うわっ!?」
驚いて飛び上がろうとしたが、翼はその場で空を切り、幹にどしんと追突する。
「は、なまる?」
はらはらと舞う葉の中で、おずおずとその名前を呼ぶ。
「ずらー!良かった!覚えておいてくれたんだ。」
「……え?」
「昨日、私が見つけたとき逃げて行っちゃったから、私のこと忘れちゃったのかと思ったずら……」
「そんなことないわよ!ただ、昨日は、その、驚いちゃって……」
いつの間にか逃げようという思考は無くなっていた。
「その……花丸はいったい何の用でここにいるの?」
昨日身に着けていた帽子を大事そうに抱える花丸に声をかける。
徐々に高くなる太陽が、鼻の頭が汚れた花丸を照らしていた。
「帽子のことお礼言いたくて。」
嬉しそうに目の前に突き出された帽子には、昨日拾ったあのペンダントが丁寧に刺繍されていた。
「ヨハネお姉ちゃん、ありがとう!」
ありがとう。その言葉がヨハネの心に染み渡る。
自分の心がじんわり暖かくて、なんだかくすぐったくて、まるで背骨が熱を持ったようだった。
思わず、恥ずかしさでヨハネは尻尾を丸める。
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