男「大将! 油マシマシのアチアチラーメン一丁」
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13:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:05:55.36 ID:sGoLw9kr0
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大タヌキの手術衣はところどころ生地が裂けており、更には靴すら履いておらず、土にまみれた素足には赤黒いものすら見て取れた。顔面一杯の汗も、健康的にかかれたものではあるまい。俗にいう冷や汗というやつだ。「雷来軒」は、その発する強いとんこつ臭が故に山奥に構えられた店だ。大タヌキの様子を見るに、とても車でやってきたとは思えない。
「大将、聞こえなかったのか?」
「いや、すまない。注文は聞こえていたさ。しかし、お客さん。その恰好は一体……?」
目の前の状況に、店主は半ば混乱していた。あんな格好で山を登ってきたのか。いったいどこから。いや、どうして。いやいやいや、そんなことより財布は持っているのか。通常では考えられない状況に、疑問が疑問を呼び思考が定まらない。
「大将! 俺はアンタのラーメンを食うために命を懸けて、ここまで来たんだ!」
大タヌキの「命がけ」という言葉に、店主はハッとする。この店において常に命を懸けていたのは、他ならぬ店主に違いない。それが、一常連客に過ぎない大タヌキから口から「命がけ」なんて飛び出るとは思いもしなかったのだ。思考は定まらないが、厨房には店主のルーティーン「朝九時の一杯目のラーメン」の材料が控えている。材料はあるのだ、そして店主は注文を受けた。加えて言えば、今日のラーメンはこれまでの「こってりラーメン」とは、文字通り一味違う。進化した「こってりラーメン」を自分以外の誰にかに早く食べさせてみたいという欲も相まって、店主の体は厨房へと流されていった。
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