男「大将! 油マシマシのアチアチラーメン一丁」
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12:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:05:29.22 ID:sGoLw9kr0
そこには、息を切らした背の高い男が一人。青く生地の薄い一枚布の妙な服だ。店主は、それが医療ドラマなどでよく見る手術衣であることに気づいた。短い袖に、短い裾。そこから伸びた細長い手足は常連のナナフシを思い起こされるが、対照的にポッコリと突き出た腹が別人であることを物語っている。しかしまあ、何というアンバランスな体形だろうか。仮に店主が名付けるとしたら、まんまるとした体に刺されているかのような手足、「リンゴ飴」であろう。しかし、りんご飴と呼ぶには肌は酷く黒ずんでいて如何にもまずそうだ。目の周りに至っては、その黒さはまるで墨を塗っているかのようであった。
店主は、謎の来訪者の顔を見て驚いた。
「大タヌキじゃないか!」
頬の肉が削げ落ち、肌の黒さがまし、異様な体形と人相に変わってこそいるが、目の前に立っている男は正に来々軒の大常連「大タヌキ」に間違いなかった。明らかに壮健とは言い難いその立ち姿に、店主の不安が一層に増す。しかし、こんな不健康そうな男を、いくら開店時間まで時間があるからと言って店先に立たせておくわけにもいかない。店主が、扉の鍵を開け大タヌキを店へと招き入れると、大タヌキは汗だらけの顔で精いっぱいの笑顔を店主へと向けてみせた。
「大将。こってりラーメン大盛りで」
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