60:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:10:05.62 ID:W5lmC8VA0
「月夜の下の散歩も、たまには良いものでしょう?」
私が問いかけると、影は歩み寄りながら小さく会釈をした。
街灯の下に立ち、藍子ちゃんの姿がようやく私の前に浮かび上がる。
「いつもは、門限が厳しいですから、あまり夜に出歩くことがなくて」
「そっか。藍子ちゃん、高校一年生だっけ。
こんな時間に呼び出してごめんね?」
「いいえ」
ご両親には、レッスンが長引いて遅くなる、と言ってあるらしい。
嘘をつかせてしまった事が、ちょっとだけ申し訳ない。
「今日は、どうかされたんですか? ちとせさん」
何の打算も、怒りも悲観も無く、至極当然な質問を真っ直ぐに、藍子ちゃんは私に投げかけた。
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