黒埼ちとせ「進化論」
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55:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:00:09.96 ID:W5lmC8VA0
 ――私は一体、千夜ちゃんの何を見ていたんだろう。

 千夜ちゃんは、私が考えていたよりもずっと、自立していた。
 依存していたのは私の方。

「以前、お嬢さまはアイツに、こう仰ったと聞きました。
 お嬢さまが、お嬢さまご自身だけの道を見つけた時、私も私の人生を生きられる、と」

 千夜ちゃんは、かぶりを振った。
 見つめ直すその瞳は、煌々と燃えていて、活力に充ち満ちている。

「僭越ながら、私もそのお返しがしたいのです。
 私に手がかからないことを……もう、私のことは心配要らないと、お気づきになられた今はただ、ご自身のことを。
 気づかないうちに諦めたご自身の夢を、お嬢さまご自身のために、見つけていただきたいのです」


「私が諦めた、夢……?」
「そうです」


 ――諦めて、ずっと目を背け続けてきたもの。

 人並みの事ができない中で、知らぬ間に絶望し、期待を放棄してきたもの。


「夢は夢で終わらない。
 アイドルをやっていくうちに、気づかされた事の一つです」



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