黒埼ちとせ「進化論」
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39:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 18:17:32.55 ID:W5lmC8VA0
「う〜ん」

 何かはあるんだけど、それを言語化できずにいる。
 それを彼に悟られるのは何となくバツが悪くて、私は曖昧な返事でお茶を濁した。

 また意味深な態度をとっている、と彼が思ってくれることを期待する。
 実際、それだけの余裕を持てるものならどんなに楽か。


 魔法使いは、そんな私の様子をしばし見留めて、ふと調子を変えてきた。

「ラジオ、つけてくれないか」
「えっ?」

「お前の後ろにある、キャビネットの上のラジオ」


 ――言われるがまま、私は立ち上がって後ろを向き、そこに置いてあった、たぶんそれと思われるボタンを押した。

『こらぁ、フレちゃん〜』

 途端、ゆるい調子な女の子の声が部屋に鳴り響く。

『番組のタイトルコールくらいちゃんとやろ、って言ってるやん。また怒られるよー?』
『うわあ〜ん、シューコちゃんゴメンね☆ フレちゃん本番に弱くって』
『本番に弱い人って、毎度毎度そう器用なアドリブ入れらんないと思うけどね。
 まぁ次がんばろ? はい、えーと、そんなこんなで今日も元気に……』



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