黒埼ちとせ「進化論」
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28:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:43:33.63 ID:W5lmC8VA0
 私にとっては、あまりピンとこない話。

 この弱い身体でも、求めたものが手に入らないわけではなかった。
 千夜ちゃんだけでなく、誰かにお願いをすれば断られることは無かったし、良い思いもさせてもらえた。

 だから、私にとって幸せとは、もたらされるものでこそあれ、勝ち取るものではなかった。
 たとえ勝ち得たものがあるとしても、最期の向こうへは、何も持っていけはしない。
 残らないものに、何の意味があるだろう。


 だけどこの子は、控えめな性格をしているけれど、“小さな幸せ”だけは貪欲に、積極果敢に求めていく。

「小さな幸せに対して、そうまでして一生懸命になるのが、私には新鮮だなぁって思っただけなの。
 嫌味でも皮肉でもなく。自分で勝ち取ってこなかった私には、ね」


「幸せを願うことは、そんなにヘンなことでしょうか?」


 藍子ちゃんは、怒らなかった。
 悲しむでもなく、いつもの柔らかな表情をしたまま、フッとその顔を広場の方に向ける。

「あれを見てみてください」



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