29:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:50:04.21 ID:W5lmC8VA0
言われた通りに目を向けると、遠くの方に銅像らしきモニュメントがあったのを見つけた。
天に向かって手を伸ばす裸婦像。
「この間、通りすがりのおばちゃんから聞いたんですが……あれ、一度作り直されたみたいなんです」
「作り直された?」
「数年前に起きた台風の豪雨で、この辺りも土砂崩れとかあったみたいで、あの像も……ううん」
藍子ちゃんは首を振った。
「元通りに作り直したのでは、なかったみたいです。
地元の人からの要望があって、それまでは犬を連れる男の子の像だったのが、あのようになったとのことで」
犬を使役する男の子の姿が、どこか隷属的なものを連想させるとか何とか――。
藍子ちゃんも、よく理解できなかったようだけど、そういう意見もあったという。
裸の女の子だって、どうなんだろうって思うけど。
「ふぅん……あは、何だかおっかしい♪」
私は肩をすくめてみせた。
それは、誰へともなしの悪戯めいた挑発の意味もあった。
「かつての男の子の像だって、地元の人の要望があったでしょうに、それを変えちゃうんだ?」
「そう」
だけど、藍子ちゃんはどこまでも優しい顔をしたまま、私の言葉を受け止めてくれる。
「変わってしまうものなんです……色々なものは、きっと」
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