5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 17:41:58.30 ID:n4MKx+790
マンション近くの公園で休日なら、利用しているのは私だけじゃない。実際その日も隣の隣ぐらいに住んでる友達や、近所じゃないけどよく公園で見かける小学生だったりお年寄りの人だったり、色んな人が好き勝手に遊んだり、それを見てどこか穏やかな顔をしてみたりとそれぞれに憩いの場を利用していた。
だけど、子供たちのきゃーきゃーという叫び声より、中身はわからないけどきっと嫌なことで盛り上がっているんだろうな、ってことぐらいは察せられるおばさんたちの井戸端会議より、電話の向こうで嫌なことでもあったのか、電話を耳に当てながらへこへこと頭を下げながら申し訳ありません、を繰り返しているサラリーマンの声より先に、私の鼓膜を振るわせたのは、大っ嫌いだったはずの歌だった。
ああ、今でも覚えている。
その瞬間に私は、見えない、だけど大きな足に背中を蹴飛ばされたみたいに、歌声のする方へと走り出していた。
きっと大人が早足で道を行くのよりも遅い、子供の全力疾走。
不思議だった。
大っ嫌いなはずなのに、聴きたくなんてないはずなのに、その時は、私が辿り着く前にその歌が終わってしまわないことをただひたすらに祈っていたのを覚えている。
今でも歌が嫌いだったら、きっと頭がおかしくなったのか、冬の寒さでネジが外れてしまったかを疑いたくなるような、心と身体があべこべになったみたいな。
そんな、疾走だった。
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