3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 17:39:38.38 ID:n4MKx+790
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歌うことが大嫌いだった。
今の私が聞けば笑って、今の私を知ってる人が聞けば冗談だと思うかもしれない、もう一つの本当のことだ。
子供の頃、っていっても今も子供には変わらないんだけれど、小学校に上がる前ぐらいの私は、それはもう歌が大嫌いで仕方なくて、お遊戯会とかで合唱をするときは決まって口パクで済ませていたものだから、保育士さんは相当手を焼いていたのだと思う。
思い返すと申し訳ないけれど、過ぎたことはどうしようもない。
だから、心の中で謝っておく。ごめんなさい先生。思い返す度に恥ずかしさに顔を紅くする黒歴史だった。
それで、そんなに歌が大嫌いだった私がどうしてアイドルになろうなんて酔狂なことを考え始めたのかというと、それはやっぱり、小さい頃に出会ったあの人の、魔女のおかげに違いない。
忘れることもできない、六歳の冬だった。
卒園式まであと少し、ってことに何か風情とか情緒とかを感じられるぐらい心は発達していなかったけど、ただ卒園式が嫌だという気持ちでいっぱいだったことは今でもはっきりと思い出すことができる。
別に、幼稚園に何か思い入れがあったわけじゃない。
というか、そんな郷愁を感じられるぐらいの歳でもなかったから、幼稚園を出て小学生になるっていう未来については、他の子たちと同じで楽しみにしていたように思う。
一年生になったら。朝の教育番組で流れていた歌のフレーズを思い起こす。
友達が百人なんて出来る訳ねーだろ、って、ませた男子はバカにしていた。
実際皆、口にこそ出さないけれど、そんな感じに冷めてたけれど、それでもせめて十人、いや、二十人、クラス皆と友達になって、ランドセルを背負ったり、知らない勉強をしたり。
そんな、他愛もなくてあやふやな未来予想図を描いていたような気がする。勿論、その中には私も含まれていた。
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