27:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:05:03.39 ID:n4MKx+790
アイドルとは、なんだろうか。
きっとそんなことを同じ業界の人間に聞いたとしたら、今はそんな哲学なんて語っている暇はないと一蹴されるか、そうでなければ僕と同じく頭を抱え続けるかのどっちかだと思う。
当たり前だ。そこに明確な答えなんてないのだから。今だってはっきりとした答えを出せる気がしない。
迷走していた。きっとあの三年目から、二年前の夜までずっと、僕は愛梨をプロデュースしているつもりが、愛梨にプロデュースされて、いや、回る世界と自分自身の不甲斐なさにずっと、振りまわされ続けてきたといってもいい。
それは今でも後悔している。恥じるべきことだとも、思っている。だけど、事実に違いはなかった。
世間が求めていることがある。多くの人間が望んでいることがある。だったら、それに答えることは正しいことじゃないのか。
きっとあの頃の僕は、ずっとそんなことを考えていたのかもしれない。
一人でも多くのファンがそれを望んでいるのなら、望むことを叶えてやるのはアイドルとしてきっと正しいことだ。多分それに間違いはない。実際、今もうちの事務所も余所の事務所も関係なくアイドルたちに聞いて回ったら、ファンの望みを叶えてあげたいと答えない子の方がきっと少数派になるだろう。
だけど、そこには前提条件がいくつもあって、僕は、それを致命的なまでに履き違えていたのだ。
そのデータを見て、僕は愛梨の路線をグラビアに寄せていくことに決定した。上層部も数字という根拠があればそれを拒絶する理由もなく、愛梨にもそれを説明したことで、十分に納得してもらえたはずだった。
白うさぎを模した衣装に身を包んで、どこか物欲しげに潤んだ目で頬を膨らませた愛梨が表紙を飾った週刊誌は、それだけで飛ぶように売れていった。
捲土重来。あえて誰かが口にすることはしなかったけれど、そんな空気が世間に漂っていたことも、覚えている。
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