十時愛梨「それが、愛でしょう」
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26:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:04:12.14 ID:n4MKx+790
 プロデュースを初めて三年ぐらい経ったところで、愛梨の人気に陰りが出てきた。それは認めがたいことだったけれど、事実だった。
 愛梨が誰からも注目の的になった初代シンデレラガールであることに変わりはない。今だってそうだ。勝ち取った栄光は不変のものとして輝き続ける。
 だけど、アイドルには賞味期限がある。そのことを示すようにCDの売り上げは右肩下がりで落ちていったし、そうしている間にも次代のシンデレラガールが生まれたり、未来のトップアイドル候補生として色んな事務所から日々アイドルの卵がデビューし続けていた。

 だからこそ、焦っていたのかもしれない。
 それを見付けたのは、愛梨に関して贈られてくる様々なデータとにらめっこをしては、前年と比べて下降し続けるグラフに心がへし折れそうになっていた時だった。
 下がり続ける関連グッズの中で一つだけ、飛び抜けて売り上げのいいものがある。
 それは、この前何の気もなしに取ってきた少年誌の売り上げだった。前の月と比べて倍以上に売れている理由は、驚くほどシンプルなものだ。

 ――愛梨が、巻頭グラビアを担当している。

 正直なところ、こういう仕事に関して僕はあまり積極的に手を出したいと思っていなかった。それはある種の意地というか、担当アイドルが水着に身を包んでいる姿を全国に発信すると考えたとき、何か抵抗感のようなものがあったからだ。
 それでも、世間はそれを求めている。
 何よりも雄弁に、そして残酷に、跳ね上がるグラフとプラスのついた数字がそれを物語る。


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