十時愛梨「それが、愛でしょう」
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21:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 17:59:44.74 ID:n4MKx+790
 だからこそ、それこそくだらない偏見でしかないのだけれど――かつての業界では確固として一つのボーダーラインとされていた、二十代を過ぎても現役でアイドルとして活動を続けている人は何人もいる。
 現に、かつてのトップアイドル、日高舞も今は現役復帰しているし、その破天荒さで日々お偉いさんの頭を悩ませているとは上司から聞いた噂だった。

 それだけに、愛梨がアイドルを続けるという選択肢だって、十分に考えられた。
 それでも、終わりを選んだのは僕たち二人に他ならなかった。二人で話し合った末に、納得して決めたことだった。
 身勝手な話だとは思う。ここで終わりにしようと、そう決めているはずなのに、今更名残惜しさを感じているのだ。誰かにそう詰られてしまえば返す言葉もない。

 だけど、そんなものだとも、そう思ってもいる。砂時計をひっくり返したら三分前に戻らないかなと、あの時こうしていたら、もし違う選択肢を選んでいたらと、いつだって、もしもを考えてしまうのが、きっと人間なのだから。
 沈黙が続く。晴れ舞台のはずなのに、まるで葬式にでも向かうかのように僕たちは手を繋いで、舞台袖に向けて歩いていた。

「プロデューサーさん」

 黙りこくっていることに耐えられなかったのか、それとも気を遣ってくれたのか、先に口を開いたのは愛梨の方だった。


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