9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/11(木) 19:46:01.31 ID:fM9nM/xA0
正直なところ、歯牙にもかけられていないと、そう思っていた。
黒埼ちとせはトップアイドルになれる。俺はそう信じて疑っていないし、実際、着実に彼女のファンは加速度的に増え続けているが、まだ、そう呼ばれるに相応しい実績は積み上げていないのが実情だ。
トップアイドルとなれば、しがらみも多いし関わる人間の数だってそうだ。十時さんは仲間だといったが、プロジェクト・シンデレラガールズの性質上、この事務所にいるアイドルたちは皆ライバル同士ということになる。
勿論、765プロダクションの彼女たちだって当人同士はきっとそう思っているのだろうが、「敵」とまではいかなくとも、兄弟家族と呼ぶには遠い戦いの相手だというのに違いはない。
「ちとせさんのこと、聞いたんですけど……早く良くなってほしいです」
まるで自分のことのように目を伏せて、細い眉を八の字に歪めながら十時さんはそっと俯いた。
「……本当にね」
ああ、本当に。何もかも嘘だったかのようにちとせが明日に目覚めて、また、意味ありげなことを呟いて、冗談めかして笑ってくれればどれだけいいか。
現状で命に別状はない、というのが不幸中の幸いだった。それでも、心拍と呼吸が今は安定しているだけで、それもいつ乱れて、最悪止まってしまうかわからない、綱渡りを続けているのには変わりない。
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