周子「だから、あたしが逢いに往く」
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41:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 20:14:43.68 ID:XnGtX3Tv0
 
 ……おかしい


 紗枝のいる方向は分かっている。
 しかし一向に距離が縮まらない。
 延々と同じ部屋を突き進むだけだ。

 周子はこの感覚に覚えがあった。
 この景色という意味ではない。
 醜狐としての己を打倒さんとした当時の人間達、その戦いの最中に似た感覚に陥ったことがあった。所謂これは……

「幻術か、小賢しい」

 周子はひとまず足を止める。
 面倒ではあるが先にこれらをどうにかしなくては。

 幻術はそれそのものを物理的に破るのは不可能に近い。
 破るのであればその不可能に近い力技か、同じく幻術で塗りつぶすか、術者を探して始末する必要がある。
 本来であれば、たかだか人間一人の術などどうということはないのだが、この状況はおそらく複数人によるもの。
 相手が増えるほど突破は難しく手間がかかる。

 足を止めて精神を集中させ、偽りの音や景色を遮断して本来そこにある本当のそれを感じ取る。単純なようで繊細な技術。

 畳がある、四方は襖……景色は現実のそれを借りている……左右に……矢!



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