もしもし、そこの加蓮さん。
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114:名無しNIPPER[saga]
2020/05/01(金) 00:04:49.12 ID:TaaH9Z3P0


ひとしきり興味を満たし終えたところでようやく、文香は我を取り戻しました。

 「……申し訳有りません。加蓮さんの都合も考えず、独りよがりな会話を……」

 「いいって。レッスンまでまだあるし、久しぶりに本の話ができて楽しかったし」

 「……その、失礼ですが」

 「ん?」

 「意外だったのです。加蓮さんは……今どきの、
  華やかな方で、こうした趣味とは、少し……縁遠いかと、考えていました」

 「あー。ま、そうかもね。昔は熱中したけど……また何か読もっかな」

 「……読書好きの知己が、いらっしゃったのですか?」

 「え?」

 「あぁ、いえ。何か……書に親しむ、契機のような何かが、あったのかと思いまして」


契機ならありました。
入院生活。母の一言。

決して多いとは言えない日々の選択肢の中で、
読書は気の置けない友としていつでも傍に居てくれました。
きっかけが何にせよ、頁をめくるのは加蓮にとって楽しいもので。


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