13:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:13:17.46 ID:TJReGnPWO
「人も鬼も仲良くすればいいのに…」
それからと言うもの、私は姉さんの姿をどこかに残したくて必死だった。
姉の口癖を真似した。似合ってもいないぶかぶかの羽織を着た。姉が好きだと言ってくれた笑顔を無理やり貼り付けた。全ては姉さんを…誰からも必要とされていた姉さんをこの世につなぎとめるために。
14:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:13:51.71 ID:TJReGnPWO
「てめェ…いい加減にしろよォ!」
「はい?どうされました?」
だからこんな風に不死川さんに胸ぐらを掴まれたって辞めるつもりはない。
15:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:14:25.44 ID:TJReGnPWO
「こんな時まで笑顔かァ?それはカナエが望んでた笑顔なのかよ?」
「ッ…」
違う、違う、違う、違う、そんな浅い理由じゃない。私がどんな想いでやっているのかも知らないくせに…
16:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:15:09.58 ID:TJReGnPWO
「…そこまでだ」
「あァ!?」
冨岡さんが止めに入ってくれる。いつもいつも不死川さんの神経を逆撫でする彼だけれど、今回ばかりは助かった。
17:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:15:46.55 ID:TJReGnPWO
「ありがとうございました」
「…お礼を言われるようなことはしていない」
「ですが…」
「それと…」
「はい?」
18:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:16:29.66 ID:TJReGnPWO
「お花見をしましょう」
そんなことを続けて、新しい春がやってくる。私は姉さんと同じようにお花見をしようとアオイに声をかけた。
19:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:17:11.80 ID:TJReGnPWO
「ですが、しのぶ様…今年はまだ桜が咲いていません…」
「けれど、今年は柱の皆さんのお休みがこの日しか取れないの」
「ならば中止にした方が…」
「やります!絶対に!やるんです!」
「は、はい…」
20:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:17:51.91 ID:TJReGnPWO
場所は去年と同じ産屋敷邸。だけど、御館様は体調が悪く参加できなかった。
「ごめんね、しのぶ…」
「御館様が謝られることでは…」
21:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:18:28.52 ID:TJReGnPWO
「…誰も来ない」
当たり前だ。私は姉さんではない。いくら口癖を真似ても、いくら羽織を着ても、いくら笑顔を貼り付けても、私は姉さんのようにはなれないのだと、突きつけられているようだ。
22:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:19:13.27 ID:TJReGnPWO
「雨…」
最悪だ。雨まで降ってきた。桜もない。人は来ない。挙げ句の果てに雨まで降ってきてお花見などとは到底言えない。無理を言って付き合わせた御館様やアオイに申し訳がない。これだけ付き合わせて、結局はお花見一つ満足に開くことができなかった。続けることができなかった。
23:名無しNIPPER
2020/04/04(土) 14:20:00.15 ID:TJReGnPWO
「本当に…情けない…花も咲いてないのに…」
「花ならある」
「え?」
振り向くと、そこには冨岡さんがいた。何故か木の枝を一本持って。
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