飛鳥「ボクが私だった頃」
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3:名無しNIPPER
2020/03/10(火) 01:54:11.08 ID:isiKC6fj0
 男とは、こんなにもカッコいいのか。偶像とは、こんなにも美しいのか。初めてのライブは、私の心にヒビを入れた。その時だったかな、彼に……プロデューサーに出会ったのは。
 あのロッカーたちを束ねる、346プロダクションのプロデューサー。ライブが終わった後も会場に残っていたボクを、彼は見つけた。

 やっと、見つけてくれたね。カエルラの咲いてJewelでボクが歌う歌詞、そのまんまの意味で、ボクは有象無象の女性の中から見つけてもらい、選ばれたのだ。
 ステージを降りて、彼は名刺を差し出した。東京にある、アイドルの事務所。彼は、私だった頃のボクにも、新たな世界を見せてくれたのだ。
 だけど、まだ、ボクは私だった。名詞だけ受け取ると、逃げるようにステージを去ったのは、なぜだったかな。
 きっと、怖かったのだと、今なら思える。非日常への扉を開けてくれるプロデューサーに、引っ込み思案の私は、別のセカイへ行くことを怖がった。でも、名詞だけは、なぜか大切にしていた。

 次第に、私はヒビが割れて崩れていった。あのロッカーたちの曲を聞くたびに、どんどん崩れていく私は、スカートを短くして、髪もバッサリ切って、あのボーカルの様にエクステを付けるようなになった。
 けれど、セカイとは子供に厳しいものだった。スカートの丈も、エクステも、まるで犯罪の様に扱われ、正された。
 だったら、そんな大人たちでも、正せないことをしてやろう。そう思ったのが、十四歳の誕生日だ。私、二宮飛鳥は、一人称を変えた。ボク、二宮飛鳥へと。
 言動も、考えも、このセカイを見る場所も変えた。ボクはそうして、『痛いヤツ』になったのだ。



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