82:21/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:02:18.87 ID:ldlfMP+C0
これを誕生日に贈られて喜ぶ人もいないことはないのだろうが、少なくともちとせはそちら側ではない、ような気がする。千夜からの贈り物であれば別だが。
「違うって! 千夜にあげるってば。いらない?」
「私に厄介払いさせるつもりなら断ります」
「あ、そう? もしかして前持ってったやつ、捨てちゃった?」
「さぁ、どうでしょうね」
はぐらかすところを見ると、なんだかんだ持っていてくれているようだ。そもそも気に入っていないなら目を引かれたりしないのに、ひねくれているからこその素直さだった。
「じゃあもう一度頼むよ。気に入らないなら捨てていい。でももしそうじゃないなら、そうだな……1匹だけってのも可哀想だから、こいつを仲間に入れてやってくれ」
そうして再び手渡すと、今度はためらいがちに受け取ってくれた。
まじまじと見つめているが、すぐに本来の目的を思い出したのか黒いぴにゃこら太を抱きかかえるように持ち替えて、小さな声で言う。
「……貰っておいてあげます。どうも」
カバンにはまだ入れないつもりらしい。やはり気に入っているようだ。
「こちらこそ。で、ちとせのプレゼントはどうする?」
「決められそうにないので、先にお前の案を示してもらいましょう。お前の案に乗せられるか、考え直すかはその後決めます」
「……日が暮れそうだもんな。じゃあ行こうか、店はどの辺だったかな」
歩き出すプロデューサーの背中を、片手で人形を抱いた千夜が追う。
目的地に着くまで千夜が横に並ぶことはなく、言葉を交わすことも無かったが、居心地は不思議と悪くはなかった。
「……お前には失望した」
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