白雪千夜「私の魔法使い」
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81:21/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:01:10.09 ID:ldlfMP+C0
 ちょっとだけ歩くのが速くなった千夜の後をついていくと、途端に急ブレーキが掛かり危うくぶつかりそうになる。

 何かを見つけたのか一点に集中された千夜の視線の先には、ゲームセンターのクレーンゲーム、の景品、の中にある千夜に教えた緑色の物体があった。似たような黒いのと桃色のまである。

「……ぴにゃこら太、実は気に入ってたの?」

「ノーコメントで」

「そこは素直になった方が得だぞ? どれ、ちょっとやってみるか」

「は? お前、今日の目的は遊びに来たわけでは」

「だって千夜、考え込むばかりで店に入ろうともしないだろ。俺はもう決まってるから、せめてどの店に入るとか決まるまでは挑戦させてくれ」

「む……。ふん、勝手にすればいい」

 そう返されると弱いのか、千夜もそれ以上は何も言ってこなかった。

 たまに低く唸りながら熟考する千夜を尻目に、プロデューサーはいつぶりとも覚えていないクレーンゲームにコインを投入する。

 千夜がプレゼントの方向性だけでも決めるのが先か、不細工な顔の人形を手に入れるのが先か。それとも、プロデューサーの財布が空になるのが先か。

 時間とお金が浪費されていく中、つい熱中してしまい20を超えてから数えてない何度目かの挑戦で、周囲の店の確認から戻ってきたらしい千夜がついに痺れを切らした。

「お前……下手ですね」

「貯金箱って言われるだけあるな……。まあいい、こういう時にだけ使える技があるんだ」

「技? 現実逃避してもお金は帰ってきませんが」

「逃げっちゃ逃げなんだけど、戦略的撤退? えっと、すみませーん」

 プロデューサーは近くを通った店員に声を掛け、交渉の末に狙っていたぴにゃこら太人形を取りやすい位置へ置き直してもらった。

 なお、途中から千夜のアドバイスという名のリクエストにより、緑ではなく黒色の目つきが悪いぴにゃこら太人形が今回の獲物だ。

 千夜に引き取られていったものとサイズも似ていて、カバンにも余裕がありそうだし持って帰るのに苦労はしないだろう。

「そんなやり方があるんですね」

「何度か近くを行ったり来たりしてたからな、あの店員さん。苦戦してるとこ見せてからじゃないと使っちゃいけない最終手段ってこと」

「そんなことをわざわざお前に教える物好きな方も、やはり実力は同程度なのですか?」

「……どうだったかな。だいぶ昔に教わったから、教えてくれた人も俺に教えたなんて覚えてないよ――っと。はい取れた」

 これで取れなきゃどうやったら取れるんだ、というギリギリまでサービスしてくれた店員に感謝しつつ、景品である黒いぴにゃこら太を引っ張り出して千夜の前に差し出した。

「……何の真似だ」

「あげるよ。というか千夜、まだ決まらないのか?」

「! ま、まさかお前……これをお嬢さまに……!?」



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