白雪千夜「私の魔法使い」
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78: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:57:03.25 ID:ldlfMP+C0
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 駅前とはまた鉄板な待ち合わせ場所だが、他に良い場所も思い当たらなかったので千夜と意見は一致した。

 そしてこれまた鉄板ではあるが、今日は学校帰りの千夜の買い物を付き合わされている。

 今頃ちとせはレッスンに励んでいるだろう。そんな中で事務所を抜け出して千夜と買い物とは、心が痛みっぱなしだった。

 しかしこれもちとせのためであり、そこだけは弁解の余地は残されている。今日買いに来たのは他でもない、ちとせの誕生日プレゼントなのだ。

 千夜だけでは決められなかったらしく、2人で共同のプレゼントを贈ることにはなった。

 だが渡す相手はアイドルでありお嬢様、ともすれば渡して喜んで貰えるプレゼントなど限られてくるだろう。一般人の懐事情で用意できるものなど、ちとせなら簡単に手に入るからだ。

 つまりはそうじゃないもの、お金では用意できない付加価値が必要になる。千夜もそれぐらいは理解していたが、そこで終わらないのが千夜だった。

 千夜が選んで渡す物なら、ちとせは大喜びしてくれそうなものだ。

 まだ1年と付き合いのないプロデューサーでも思いつくが、己を無価値と断じてきた千夜にはどうしてもその発想に至らなかったらしい。その千夜が、ちとせに何かを贈ろうとしている。

 今まではいつも以上に腕によりをかけた料理を作っていたようだが、小食のちとせではせっかくの料理も満足に楽しみ切れない。より喜んで貰えるよう、第三者の意見を参考にしたい――そう言われてしまっては、誰がこの切なる願いを断れようか。

 せめて怪しまれないよう、ちとせが帰宅するまでには千夜を家に帰したい。

 千夜がオフでちとせとプロデューサーの都合の合う日を数えると、ちとせの誕生日までには今日しかなかった。

「……だっていうのに」

 駅を間違えたかと思うほど、千夜らしき姿がどこにも見当たらなかった。

 どちらも互いを捜し歩いてるから見つからないのだろう、そう考えて周辺マップが記載された掲示板を眺めながら待つことにする。それでも声が掛からず待ちぼうけていると、見知らぬ少女が隣に立って動かないことに気が付いた。

 どこか見覚えのあるキャスケット帽子と眼鏡でプロデューサーの目線からでは表情は窺えないが、学生服に赤いカーディガンを羽織って佇まいは女子高生のそれだ。少し大きめのカバンを携えた白い手も印象的で、雪のように綺麗だった。

「……ん? まさか……」

「この程度の変装でも効果はあるようですね」

 ふっとこちらを見上げた顔は、探し求めていた張本人、白雪千夜だ。

 自らのプロデューサーをも騙し通せるのであれば、効果は折り紙付きといえる。この場合は見破れなかったプロデューサーへの落ち度はどれほどであろうか。千夜は呆れているようだ。



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