白雪千夜「私の魔法使い」
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77:20/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:55:51.80 ID:ldlfMP+C0
 ちとせとはまた違った笑顔を絶やさないちひろだが、その笑顔がただただ無性に不吉なものだと第六感が告げてくることがある。まさに今がそうだった。

「……でも、必要な時は見逃さないであげてくださいね。それについては私も目を瞑りますから」

「前より一緒に居られなくなったはずなのに、どこから見てるんですか……」

「秘密です♪ それではそろそろ、私も行かないと。プロデューサーさん、失礼しますね」

 持参してきた資料の束をまとめ、席を立つちひろを視線で見送る。ドアの前でぺこりと一礼してから去ろうとするちひろの足が、ドアも半開きの状態で止まった。

「どうしたんですか?」

「ふふっ、何でもありません。プロデューサーさんにお客さんみたいですよ」

 それだけ言い残して去っていくちひろと入れ替わるように、黒い影が中へと入ってくる。今日はここには来ないはずの千夜だった。

「どうしたんだ? 帰るように言わなかったか」

「ええ、お前は確かにそう言いました。だからこれは私の……気まぐれです」

 なかなか視線を合わせようとしない千夜が気になり、プロデューサーもデスクを離れ近付こうとすると、手のひらを見せるように千夜は腕を地面と平行に上げた。そのままでいい、という合図だろう。

「気まぐれついでに、お前に頼みがあります。聞いてもらってもいいですか」

「うん? 改まってどうしたんだよ、聞くにきまってるじゃないか」

 携帯電話では駄目だったのだろうか、と考えるも今回も大事な話なのかもと思い直す。

 もしくは先日呼び出したことを気にして自分からやってきたのだろうか。プロデューサーにはあまりみせないが、千夜には妙に律儀なところがある。

「……2度は言わない。よく聞いてください」

 ふぅ、と短く息を吐いてから、やっと千夜が視線を合わせてくれた。涼やかな紫の瞳にどことなく熱を感じさせながら。

「付き合ってくれますか」

 …………。

「え?」

 どこかでちひろが怖い笑顔を浮かべてこちらを覗いているような、そんな錯覚がした。






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