白雪千夜「私の魔法使い」
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16:4/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 19:44:37.43 ID:ldlfMP+C0
 ちとせはいつか千夜を僕ではなくしたいと思っているようだが、今の千夜にその役目を奪ってしまうのは酷というものだ。
 その課題はさておき、2人が2人らしく、それでいてどちらも輝かせるにはどうするべきか。

「ちとせの魅力を誰よりも引き出せるのは、千夜の他に俺は知らない。千夜の魅力を誰よりも引き出せるのは、やっぱりちとせしか知らない。2人のことを知らしめるのに、これ以上相応しい相手がいるか?」

「ふぅん……千夜ちゃんを輝かせられるかは、私次第ってことか」

 千夜を託された手前、早々とちとせの手を借りることになってしまったことは責められても致し方なかった。

「ごめん、俺に出来るのは相応しい舞台に導くことだけなんだ。舞踏会でどう踊るかまでは、その」

「あ、違うの。そこは判ってるつもり。私が言いたいのは、こんなに面白そうなこと――もっと早く言って欲しかったなーってことだけ!」

 ちとせの赤い瞳が妖しく輝いた、ような気がするほどの熱量で先ほど以上にちとせの目は爛々としている。

 千夜を誰よりも気に掛けているのはちとせだ。千夜を輝かせる、それが出来る舞台に上がらせる。そしてその輝きを一番間近で見届けられもするのだ。食いつかないはずがない。

「もちろんユニットなんだから、千夜がどうしても嫌だというなら無かったことにするしかない。もう一度聞くよ、千夜。不満があるなら言ってくれ」

 それまで黙って聞いていた千夜は、一度だけちとせとプロデューサーを交互に見やってから、はぁ、と息を吐いた。

「私の答えなど分かっていたのでしょう。覚えてますよ、既に多くの人がお嬢さまと私のために動いていると」

 ですが、と千夜は矢継ぎ早に告げる。

「お嬢さまを引き立てるのを、私が一番こなせるというのなら……その口車に乗るのもやぶさかではありません」

「ほんとか千夜、受けてくれるんだな!?」

「お前が受けさせたのに今さら何を。せいぜいお嬢さま、と私……のために、馬車馬の如く働くのですね」

「おお……さすがに馬役までこなすのは身が持たないな……」

「ぷっ、あはははは♪ 頑張ってね、お馬さん? あはははは♪」

 ひと際愉快そうに笑うちとせと、そんな主を眺める千夜の表情は、いつになく穏やかだ。
 再び暖かな風がとある事務所の一室へ舞い込む。2人の行く先も、この風のように歓迎されたらいいと、思わずにはいられなかった。






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