10:2/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 19:36:48.92 ID:ldlfMP+C0
「そうだなあ。言うだけあって、人を魅了する素質が備わり過ぎてて怖い。俺は今、とんでもない逸材を世に放とうとしてしまってるんじゃないだろうかって、そう思うよ」
「急に頭が悪くなったような物言いですね。言わんとすることだけは、まあ、伝わりますが」
「もっと具体的に褒めてほしいんだけどなぁ。お前は人を魅了するって昔から言われてるから、なんだか新鮮味がないし」
「お前、この道のプロならば的確にお嬢さまを称えなさい。今すぐだ」
「今日だけじゃ褒めようがないって! ……今後の日程だけど、レッスン内容はちとせ用に考えておく。だから、これに懲りずにまた来てくれるかな?」
ここを乗り越えなければ2人をプロデュースすることは叶わない。何気なく次のことを促してみるが、大きな分水嶺であることに違いはなかった。
内心祈るように2人の返事を待っていると、それが杞憂であったとすぐに気付かされる。
「当然でしょ。まだ舞踏会にも辿り着けてないのに、ここで引き返すなんて勿体ないよ」
「お嬢さまが望む限り、私はどこまでもお供するのみです」
ちとせさえその気なら千夜も続けるつもりはあるようだ。ちとせのように楽しんでくれたら言うこと無しなのだが、今は2人がアイドル活動を続けれくれるだけでよしとしなければ。
プロデューサーは思い描く。2人が舞台の上で綺麗に咲き誇っている姿を。そのための魔法使いであらねばと。
「なんか悪そうな顔してるね、魔法使いさん。楽しそう♪」
「見るに堪えません。お嬢さま、あれは放っておいて今日は帰りましょう。ご自愛ください」
「……聞こえてるぞ」
皮算用より前に、まずは信頼を寄せられるよう努力せねば。そう考え直したプロデューサーだった。
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