11: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 19:37:51.57 ID:ldlfMP+C0
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レッスン場へ足を運ぶと、ちょうど小休憩の頃合いの千夜が静かに休んでいた。
ちとせには用事があるとのことで、1人でレッスンに臨む千夜を見ていてほしいと頼まれている。頼まれずともそうするつもりではあったのだが。
ちとせと違いアイドル活動に乗り気でない――ようにしか見えない千夜は、しかしトレーナー曰くレッスンそのものに手を抜いている印象はないそうだ。
ただただ事務的に、主人がそう望むから行っている。そこに千夜の意志は介在していない。
そんな千夜をどう見守ることがちとせにとっても良いのか、難しい課題だった。
「千夜、調子はどうだ?」
こちらの存在を認めた千夜が、ちらとだけ目線をやる。
「特に問題はありません。そちらこそ、随分暇なのですね」
「ははは、俺が忙しくなるのは千夜にかかってるからね。当然ちとせもな」
「お嬢さまはともかく、私に期待するのは間違っています。私は所詮、お嬢さまの戯れに付き合っているだけに過ぎないのですから」
「戯れ、か。2人は何かする時、いつもそんな感じなの?」
「……」
考える間を置いて、やがて千夜は言葉を紡いだ。
「お嬢さまが望むなら、それに従うのが私の役目。お嬢さまがそれに飽きてしまわれれば、私にとってのそれも無かったことになります」
「いや、無かったことにはならないだろう……」
「従者とはそういうものです。お嬢さまの戯れに振り回されることが楽しく感じたとしても、お嬢さまが楽しいと感じられなければ意味がない」
「うーん……。千夜って、ちとせのために生きてるって感じだな」
「そうですが、なにか」
今までになくはっきりとした口調で、千夜は自身の存在意義を宣言する。
「私に価値はありません。ただお嬢さまに仕えさせていただくこと、それだけが私の人生ですから」
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