1:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:28:52.86 ID:VkxCchnrO
父の高須竜児と母の高須大河は高校生の時に出会い、大恋愛の末に結婚して、私が生まれた。
「いよいよ明日から高校生だな、松姫」
「うん、そうだね……」
「なによあんた、シャキッとしなさい!」
2人の愛に育まれながらスクスク育った私は明日、高校生となる。父や母の期待が重かった。
やけに嬉しそうな父は定食屋を営んでおり、入学前夜の献立は腕によりをかけて豪華な晩餐をこしらえ、私の好物ばかりが揃っていた。
「ほら、松姫。あんたの好きな竜田揚げよ」
気を利かせた母が竜田揚げを箸で掴みこちらに見せつけてから、何故かぱくりと頬張った。
「おいしーい! さっすが私の旦那ね!」
「大河。そこは娘に食わせてやるところだろ」
「おっと。私としたことが、遺憾だわ」
この阿呆らしいやり取りからもわかる通り、結婚から15年ほど経つというのに両親は仲睦まじく、娘としては他所でやれとゲンナリしつつも、不仲よりはよっぽどマシだと思った。
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:32:05.12 ID:VkxCchnrO
「松姫、今日は一緒に寝ましょうか?」
結局、私よりも多い大量の竜田揚げとにんにくが入った大盛りスタミナ炒飯を平らげて満腹な母は、珍しくそんなふうに私を誘ってきた。
「パパが寂しがるよ?」
3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:34:19.71 ID:VkxCchnrO
「あんたさ、前髪切らないの?」
「切らない」
あれから今晩ママを借りる埋め合わせとして、食べ終えた食器をパパと2人で洗った。
パパは嬉しそうにしながらも、横目で私のことをチラチラ伺っていて、挙動不審だった。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:36:39.98 ID:VkxCchnrO
「そんな顔しないで、ほら顔を上げなさい」
促されて顔を上げると、母は私を抱きしめた。
「あんたは美人で可愛いわ。自信を持ちな」
5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:38:10.71 ID:VkxCchnrO
「私はちっとも怖くないわ」
ママはきっぱりそう言って、私の悩みを鼻で笑い飛ばす。しかしそれは解決になっておらず。
「だからそれは私がママの子供だから……」
6:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:40:11.83 ID:VkxCchnrO
「さ、明日に備えてさっさと寝ましょ」
「あ、待って。今、髪を乾かすから……」
再びドライヤーで髪を乾かそうとすると、いつの間にか母が音もなく背後に忍び寄っており。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:44:19.05 ID:VkxCchnrO
「……どうしよう」
その日の深夜。
スヤスヤ寝息を立てる母の隣で私は切られた前髪を弄りながら悶々として眠れなかった。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:46:56.66 ID:VkxCchnrO
「へ、変じゃない……?」
「おう。上手く切ったもんだな。似合ってる」
何故だろう。
パパに似合うと言われるとママより安心する。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:48:25.92 ID:VkxCchnrO
「お前も父さんのせいで苦労するだろう」
「そんな……パパのせいじゃ……」
「いいんだ。俺もかつては父親を憎んだ」
パパの父親。私にとってのおじいちゃん。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/23(木) 02:49:54.62 ID:VkxCchnrO
「むにゃ……竜児」
「なんだ、大河。結局お前も来たのか」
父に励まされて明日からの高校生活が少しだけ楽しみになっていると、寝ぼけた母が寝室を訪れて、どうも娘が居ることに気づいておらず。
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