ティア・グランツ「私、もう待つのはやめたの」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/04(土) 20:59:11.75 ID:DQhBkFB7O
「あんたがマルクトのカーティス中将か」
「おや、私の名をご存知とは物知りですねぇ」

レプリカ・ルークのようになるべく尊大に接してみたが、ジェイドは飄々として掴みどころがなく、早くもルークは苦手意識を覚えた。

「どうしました? 顔色が悪いですよ?」
「別に……」

ルークは軍艦を見るのも初めてであり、もちろん乗るのも初めてだった。当然、船酔いした。

「アニス、彼を船室までご案内してください」
「はいよ! アニスちゃんについてこーい!」

もう二十代も半ばだと言うのにまるで少女のような口調で先導する導師補佐。すると不意に。

「先、お風呂入る〜?」
「へ?」
「アニスちゃんが洗ったげよっか?」
「アニス!」
「あはは! 冗談に決まってるじゃん。ティアったら、もしかしてやきもち?」
「怒るわよ」
「やっば! ほら、早く行こ!」

心臓に悪いと思いつつ、船室の扉を開くと。

「適当に座って」
「あの、アニスさん、ここは……?」
「あたしの船室だよ〜」

ふわりと香る、甘い香り。
シーツも布団も枕もピンク。
自分の船室に幼い少年を連れ込んだアニスは人懐っこい笑みを浮かべちょいちょいと手招き。

「おいで」
「え、でも……」
「いいから早く来いっての」

レプリカ・ルークの日記に書かれたアニス・タトリンの腹黒な人物像から何か裏があるのではと警戒したルークを強引に引き寄せ、抱いた。

「ア、アニスさん……?」
「ルークは昔、私に胸を貸してくれたの」

アニスは覚えている。
イオン様が死んでしまった時。
泣きじゃくる自分を抱きしめたルークを。

「ティアは潔癖だから、私で我慢してね」

などと言いつつ、アニスも育っている。
けれど、幼いルークは劣情など催さず。
さりとて、泣き言のひとつも言わずに。
心地よさに包まれて、すぐに寝息を立てた。

「……ちぇっ。やっぱ、あたしじゃダメかぁ」

すっかり眠ってしまったチビルークに嘆息して、優しく抱きかかえ、船室まで運んだ。


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