39: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:23:38.69 ID:hoMUvMIQo
「あさひは、答えを見つけられたのか?」
「答えっすか。まあ、それなりには」
「そっか。そりゃよかった」
40: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:24:13.83 ID:hoMUvMIQo
最後に零したその言葉が、どうやら合図だったらしい。
次の瞬間、ぽつり、とフロントガラスの真ん中あたりに砂粒みたいな水滴が一つ分だけ落ちてきた。
それが二つ、三つと続いて、数秒足らずのうちに視界は無数の雨粒で覆われる。
41: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:24:42.54 ID:hoMUvMIQo
「懐かしいなあ」
ほとんど無意識のうちに、私は呟いていた。
42: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:25:10.61 ID:hoMUvMIQo
「いつ止むんだろうな、この雨」
私たちのやりとりを真っ白に上書きしていくように、無数の雨粒たちが一斉に車体を鳴らしている。
私は徐に目を見開いた。
43: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:25:42.56 ID:hoMUvMIQo
「まあ、そうっすね」
だから、私はそれに気づかないふりをして適当に相槌を打った。
欠伸をする真似をして、音が鳴りそうなくらい深く座り込み目を閉じる。わざとらしいくらいが丁度いい。
44: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:26:28.50 ID:hoMUvMIQo
*
プロデューサーさん、何やってるんすか?
これ? 次の仕事に向けて企画書を書いているんだ。
45: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:27:08.15 ID:hoMUvMIQo
被験者にこう尋ねる。――片方はブーバ、もう片方はキキという名前です。貴方はどちらがブーバでどちらがキキだと思いますか? ってね。あさひはどう思う?
トゲトゲとぐにゃぐにゃっすよね。うーん。それならトゲトゲのほうがキキっぽくないっすか? 理由は、うまく説明できないっすけど。
そうだね。実際、むかしの心理学者が実験してみたところ、あさひと同じように答えた人が全体のほとんどを占めたらしい。
へえー! 面白いっすね!
46: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:27:53.30 ID:hoMUvMIQo
ああ、訊かれるだろうなとは思っていたけれど、残念ながらいまは教えられない。
えー! なんでっすか!
まだ正式には決まっていないからね。これはあくまで案の段階なんだ。もしかしたら没になるかもしれないし、なのに憶測の噂だけが飛び交っても困るでしょう。
誰にも言わないっすから!
47: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:28:25.55 ID:hoMUvMIQo
*
私が目を覚ましたとき、車のエンジン音は完全に止んでいて、雨粒の跳ねる音だけが相も変わらずに空気を劈いていた。
48: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:28:52.67 ID:hoMUvMIQo
「おはよう」
すぐ隣からプロデューサーさんの声がした。私は目を擦りながら応える。
49: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:29:49.56 ID:hoMUvMIQo
運転席に腰かけたプロデューサーさんはなにやら携帯端末を操作していた。
指先は忙しなく液晶を叩いている。
はづきさん辺りに連絡を回しているのかもしれない。
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