芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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150: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 21:31:14.21 ID:hoMUvMIQo

 彼の右手がクリアファイルの中から一枚の紙を取り出す。
 それは何の変哲もない、ただのコピー用紙だ。
 存分に書き散らかしたノート一冊をそのまま見せるのも何だかという気がしたから、別の紙になるべく丁寧な字で清書したものを今日は持ってきていた。

 そう短くもなければ長くもない言葉の列を、彼は真剣に目で追っているようだった。
 そこに綴られた幾つもの文字が、果たして彼の目にはどんな風に映っているのだろうと考える。

 できることならどこまでも純粋な、透明な色のままで届いていればいいと思う。
 そして、彼が求めた通りの鮮やかな色に染まっていればいいと思う。

 それこそ魔法が消えた後の空みたいに。
 そんな大層なものを書いたというつもりは全くないけれど、だけどもしそうであってくれたなら、私はとても嬉しい。
 あの人が私に望んでいたのは、きっとそういうことだったんだといまでは思うから。




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