125: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 21:16:11.47 ID:hoMUvMIQo
随分と西に傾いた太陽が、近くの水溜まりに反射して眩しかった。
あんなにも重く沈んでいた空はもう十分な高度を取り戻している。
それは絵に描いたような夏空だった。
澄んだ青は千切れた雲で部分的に隠されていて、だからこそ、その間を縫って、どこまでも飛んでいくことができそうな空だった。
右手をぎゅっと握りしめる。
本当はまだ怖かった。ずっとこのままでいたかった。
空の青さなんて綺麗に忘れてしまって、降り続く雨の冷たさに溺れたままでいたかった。
どこかへ向かって歩き出す勇気を、私はいまも手に入れられていない。
耳鳴りの消えてしまった世界は、こんなにも真っ暗で、不安定で、前も後ろも分からない。
――だけど。
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