10: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:07:54.42 ID:ck9R+qDf0
小鳥「それでですね、そのオーディション結果につきまして、昨日は多忙にて立ち会えなかった弊社のプロデューサーの1人が録画していたオーディションを見て、高山紗代子さんのことを『逸材かも知れない』と、こう申しておりまして」
紗代子「本当ですか!?」
小鳥「先ほどもその件につきまして直接、高山紗代子さんのケータイ……スマホにかけてみたそうなんですが、あいにくプロデューサーの出先の電波状態が悪いみたいで繋がるけれど会話ができないと連絡がありまして」
11: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:10:53.78 ID:ck9R+qDf0
小鳥「高山紗代子さんにご異存がなければ、本日にでも……もちろん学校が終わった後に昨日の会場、765プロ劇場においでいただけませんでしょうか?」
紗代子「もちろんです! あの……ありがとうございます!! 本当にありがとうございます!!!」
小鳥「いいえ。こちらこそ、色々とご心配をおかけいたしました。では、765プロ劇場にて高山紗代子さんをお待ちしております」
12: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:11:30.65 ID:ck9R+qDf0
小鳥「三者間通話で聞いてましたよね? これで良かったんですか?」
「……」
13: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:12:08.36 ID:ck9R+qDf0
その日の授業は、まったく頭に入ってこなかった。
生来まじめな紗代子としては、それが良くないことだとはわかってはいたが、それでもアイドル候補生になれたことに浮かれている自分を責めることはできなかった。
幼少の頃からの夢。そして約束。
それが現実になる道が、最後の望みも断たれて途絶えたはずの道が、繋がったのだ。
学校が終わると紗代子は、夕日に染まる駅へと走っり、そのままの勢いで765プロへと急いだ。
14: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:13:30.99 ID:ck9R+qDf0
瑞希「挨拶もせずに、帰ってしまいました……いえ、しようとは思ったのですが、高山さんがひどく落ち込んでおられたので……私はてっきり高山さんはオーディションに落ちたのだと思って声をかけられなかったのです……早とちりだぞ瑞希」
紗代子「ううん。気にしないで。それに私、瑞希ちゃんの言う通り昨日は落選だったんだ」
瑞希「はて。昨日は……ということは、今日は違うということですか?」
15: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:14:10.75 ID:ck9R+qDf0
青羽美咲「はい。みなさん、こんにちは。本日みなさまに今後のことをご説明させていただく青羽美咲と申します。よろしくお願いいたします」
その場にいた複数名の娘たち……おそらくは紗代子と同じアイドル候補生であろう全員が挨拶を返す。
美咲「まずは、当事務所の事と契約等に関することなどの資料をお渡しします。呼ばれた方は、取りに来てくださいね。それでは、篠宮可憐さん……豊川風花さん……真壁瑞希さん……」
16: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:14:39.98 ID:ck9R+qDf0
美咲「高山……紗代子さん?」
高木社長「失礼するよ」
そう言って、全身真っ黒な男性が入ってくる。
17: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:15:30.40 ID:ck9R+qDf0
高木社長「私じゃないんだよ。君を合格にしたのは」
紗代子「あ、そ、そうなんですか?」
美咲「こちらは当765プロの社長、高木順二朗さんです」
18: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:16:15.01 ID:ck9R+qDf0
高木社長「だから、とりあえずレッスンなどは他の娘と一緒にやってもらう。そして随時、君には彼から連絡があるはずだ」
紗代子「わかりました。私、がんばります」
高木社長「ああ」
19: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:17:02.86 ID:ck9R+qDf0
紗代子「ふうー……劇場、すごい設備だったなあ。私もいずれ、あのステージに立つのかな……あ、ううん! 立つんだ。そのためにがんばらなきゃ」
わずか1日、昨日と今日で目指す目標が全然違う。
昨日の自分は、夢との決別を悩んでいた。
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