57: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:05:14.36 ID:G9OiTGlK0
蓮実「この上に乗って、歌うんです。まだ誰も気にかけない……それでも必死に歌う……下積みからのスタートですね!」
P「大変だったんだぞ。今の時代、なかなか木のみかん箱が見つからなくてな!」
比奈「……どうにもあの2人のノリについていけない部分があるっスよね」
58: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:07:59.84 ID:G9OiTGlK0
蒲田にあるショッピングセンターの屋上には、観覧車がある。
本当はデパートの屋上でのミニコンサートもいいかと思ったが、今の時代なかなかそういう場所はない。
池袋と吉祥寺には今もデパートに屋上遊園地があるにはあるが、それに固執するのも問題があるかも知れないと思い直し、選ばなかった。
蓮実は、今の時代のレトロプリンセスなのだ。あの時代を踏襲しつつ、今の在りようの中で活躍をさせてやりたい。
観覧車前にポツリと置かれたみかん箱と、スタンドマイク。そしてその前に並べられたパイプイス。
59: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:08:34.83 ID:G9OiTGlK0
取材らしき人もいることはいる。とは言ってもカメラだけを抱えた人が1人だけ。
蓮実「じゃあ……行ってきます」
P「ああ。ここで見ている」
60: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:09:13.75 ID:G9OiTGlK0
蓮実「ごめんなさい。私ったら初めてで緊張しているみたいです。では改めまして、まずは聞いて下さい。『サヨナラ夏休み』です」
P「なに!?」
予定と違う!
61: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:11:02.68 ID:G9OiTGlK0
懐かしい曲だ。この歌は、昔担当していた……
P「あ!」
遅ればせながら、俺は客席にいる女性が誰であるかを悟った。いや――なぜ気がつかなかったのか。やはり俺の脳味噌は、錆び付いているに違いない。
62: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:11:43.57 ID:G9OiTGlK0
P「あの娘は……気に入らんだろうな……」
嫌な予感ほど的中する。
客席の女性は、帽子とサングラスを外すと立ち上がった。
63: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:13:20.94 ID:G9OiTGlK0
蓮実は彼女の大ファンを公言している。当然に、客席にいる彼女にすぐ気づいたのだろう。
記者も観客も騒然とする中、Sは何事かを蓮実の耳元で口にすると、足早にその場を去っていった。
その際彼女は、ちらりと俺の方を見ると軽く会釈をしていった。
64: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:14:05.72 ID:G9OiTGlK0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『長富蓮実の日記』
65: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:15:40.61 ID:G9OiTGlK0
翌日、スポーツ紙を筆頭に新聞各紙芸能面の1面を、今回のこの件が華々しく独占した。
が、記事の多くはSについてばかり書かれている。
記事の対象主体が、蓮実ではなくSなのだ。
奈緒「自身のファンを公言する新人アイドルを、お忍びで激励……」
66: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:16:35.19 ID:G9OiTGlK0
その喜びもわからなくはないが、自分が窮地に立っていることを理解しているのだろうか。自分のデビューイベントを、実質つぶされた形なんだぞ。
わかっているのか、蓮実。
蓮実「それは大丈夫ですよ」
67: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 14:17:07.32 ID:G9OiTGlK0
奈緒「まあ、そういうことだよな」
比奈「ところでアタシらのデビューも、記事になったっスよ」
智香「けっこう話題になってるんですよっ☆」
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