26: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:28:39.04 ID:86FQdztyO
「お兄ちゃん……甜花とゲーム、しよ?」
食器を片付け終えて、リビングのソファで考える。
どちらから先に、話を聞いて貰うべきだろう。
甘奈と、甜花。
……考え方を変えよう。
どちらを味方につけた方が、情報を手に入れられそうか。
「あ、甘奈もやる!」
「それじゃ俺も……と言いたいところだが、ちょっと甘奈に聞きたい事があってな」
ここで馬鹿正直に『この幸せのループから抜け出したい!』と言ったらどうなるんだろう。
そのうち確かめてみるのも面白いかもしれない。
「ん、なになに? お兄ちゃん」
「そろそろ春服を買おうと思ってるんだが、今持ってる服に合うのが分からないんだよ。一回俺の手持ち見てコーディネートして貰えるか?」
「オッケー! それじゃ甜花ちゃん、ちょっと待っててね?」
「甜花……一人で、待ってる……!」
甘奈を連れて、部屋へと向かう。
残念ながら部屋に鍵は無いが、まぁあっても千雪なら開けてくるだろうから問題ない。
問題だらけな気もするが気のせいだろう。
今の千雪は、何というか、少しおかしいのだ。
……それを言うならこの世界全てがそうか。
「……はは」
「……? あ、それでお兄ちゃん、クローゼット開けて良い?」
「いや、開ける必要は無い」
「え、それじゃお兄ちゃんの服見れないけど……」
まさか信じてたのか。
多少は疑われているものだと思っていたが、そうでもないらしい。
「……甘奈」
……正直、言うのが怖い。
え、何言ってるの? と心底幸せそうな笑顔で否定されるのが怖い。
……それでも俺は、向き合わなければならなかった。
このループを抜けて、元の世界に戻って。
俺を待ってくれている283プロのアイドルの為に。
そこでみんなと、本当に幸せになる為に。
「……何を言っているんだ。俺は甘奈の兄じゃないだろう?」
そう、言葉をぶつけた。
それを聞き流して無かった事にしてくるか。
『お兄ちゃんは甘奈のお兄ちゃんだよ?』と言い聞かせて俺の記憶を薄れさせてくるか。
どう来るかによって様々な対応を考えていた。
どの道、俺に出来る事なんて無いにしても。
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