27: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:30:53.13 ID:86FQdztyO
「…………は? 何言ってるの、お兄ちゃん」
けれど、それに対して甘奈の反応はとても冷たいものだった。
馬鹿にした様な、馬鹿を見る様な。
下らないゴシップ三文記事を見下す様な。
そんな、冷たい視線だった。
「……いくら甘奈の大好きなお兄ちゃんだからってさ、限度があるよ」
「いやだから! 兄じゃないだろう!」
「もう甘奈を馬鹿にするのはどうでも良いけどさ。甜花ちゃんと千雪お姉ちゃんにだけは絶対そんな悪ふざけしないで」
「……何、言ってるんだ甘奈……」
……まさか。
甘奈は、『本気で俺達が兄妹だと思っている』のか?
まずい、まずい、まずい!
前提が崩れ始めた。
俺の予想では三人が妹と言う体で、ずっと演技しているものだと思っていた。
この狂った世界は彼女達が作ったものだと思っていた。
けれど、どうやらそうでは無いらしい。
少なくとも甘奈が嘘を吐いている様には見えない。
「……悪かった、甘奈」
「……正直、ちょっと見損なったかも」
結構きつかった。
どうせ無かった事になるとは言え、それでも甘奈に失望されるのは苦しかった。
だから、もう、取り繕うのも説得するのも諦める。
俺がただ、俺の事を話すだけだ。
「…………それじゃあ甘奈。俺が見た夢だと思って、少し話を聞いてくれ」
「……何?」
「とある、アイドル事務所の話だーー」
台本なんて要らない。
脚本なんて要らない。
効果音も、照明も、何も要らない。
俺の記憶を、夢を添えて、ただ話す。
60Res/110.14 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20