28: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:31:45.16 ID:86FQdztyO
283プロの日常を。
俺と、社長と、はづきさんと。
オーディションで入って来たアイドルと。
スカウトで入って来たアイドルと。
そのみんなが、みんなで努力して。
力を合わせて作り上げた、辿り着いた場所の話。
まだまだこの先の道も長いけれど、それでも彼女達なら辿り着けると。
そんな彼女達を、全力で支えてあげたいと願い続けてひたすら走り続けて来た俺の。
これからもその事務所で、みんなと共に夢を叶え続けたい、と。
そんな、俺の夢の話を。
途中途中、甘奈は相槌を入れてくれた。
楽しそうに聞いてくれた。
何となくだけれど、夢見てくれたと思う。
大崎甘奈と言う人間が、アイドルになる夢を。
「……随分鮮明に覚えてるんだね、お兄ちゃん」
「当たり前だ、忘れられる筈が……いや、何度も忘れて来たさ」
それでも思い出した。
真っ先に思い出すのは、あの事務所の事だ。
俺にとって、あそこが全てなのだから。
俺にとって、あの事務所で彼女達と過ごす時間が全てなのだから。
「……所詮夢の話だ。笑ってくれても構わない」
それでも。
もう一度。
「……俺は、あの場所に戻りたいんだ」
真正面から、全てをぶつけた。
思えばプロデューサーである時の俺たちとなんら変わらなかった。
ただひたすらに、真正面から思いをぶつけ合って。
何となく、温かく感じる。
「……笑わないよ、お兄ちゃん。だってお兄ちゃん、すっごく真剣だったし」
「……ありがと」
「それとね?」
何となく、寂しそうに。
「……夢の話をするお兄ちゃん、楽しそうだったよ。今までずーっと甘奈達と一緒に過ごしてきて、そんな楽しそうな顔見た事無かったから」
……そうか。
もしかしたら甘奈にはあるのだろう、今までの記憶が。
兄としての俺と、姉としての千雪と共に過ごして来た十七年分の記憶が、きっと。
それでも彼女は、信じてくれた。
それはきっと、きちんと向き合えたからで。
その積み重ねがきっと、幸せに繋がるんだと思う。
「……さっきは変な事言ってごめんな」
だとしたら、『俺は兄じゃない』なんて発言はとても残酷な物だっただろう。
申し訳なさと苦しさで胸が締め付けられる。
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