【シャニマス】アルストロメリアと幸せな日常
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12: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 17:32:26.45 ID:86FQdztyO

『この幸せがいつまでも続いてくれたら』

 ぞくっとした。
 訳の分からない目眩がした。
 これはついさっき、俺が甜花が作ってくれた朝食を食べた時と一言一句違わないおれの感想だ。
 ついさっきなんだ、初めてなんだ。

 勿論彼女達と過ごしていれば、そう感じる事もあるだろう。
 俺と言う同じ人物が抱く感想なのだ、一字一句違わぬ事もあるだろう。
 だが、理由はないが確信があった。
 俺は以前も甜花の手料理を食べて、同じ感想を抱いた、と。

 吐き気がする。
 部屋の床がぐにゃりと歪んだ様な感覚に陥った。
 呼吸が荒れてまともに酸素を取り込まなくなる。
 もう一つの考えに、思い当たってしまったから。

 もう一つのメモ。
 その内容に、心当たりがあってしまった。

「っ!」

 勢い良く、俺は自分の部屋を飛び出した。
 ドタドタと音を立てて階段を降り、そのままの勢いで玄関へと向かう。
 違ってくれ、気のせいであってくれ、記憶違いであってくれ。
 そう望みを込めて、俺は玄関を開く。

 その先が外なら、それで良い。
 全部俺の思い違いだ。
 けれど、何となく分かっていた。
 あのメモの通り、きっと俺は外へは……


「……あれ、お兄ちゃん? どうしたの、そんなに慌てて」

「……そんなに早く、甜花とゲームしたかった……?」


 ……俺は、リビングに居た。

「…………ぁ……」

 思い出してしまった。
 全てに、気付いてしまった。
 今日が初めてじゃなかった。
 今日を迎えたのは。

 2019年の4/1を迎えたのは、今日が初めてじゃなかった。

「……なんでも、ない……」

 叫びそうだったのを必死に堪える。
 発狂しそうな心を全力で抑えつける。

 大崎甘奈だ。
 大崎甜花だ。
 間違い無い、彼女達の名前が苗字まではっきりと分かる。
 ついさっきまで当たり前の様に家族として接していた事実が、今では気味が悪過ぎて吐きそうになる。

 あり得ないだろう。
 おかしいだろう。

 だって俺は、彼女達の『プロデューサー』なんだぞ。

 状況の把握が間に合わない。
 矛盾だらけの情報の本流に頭が追い付かない。
 脳の処理が限界を超えて言葉すら上手く組み立てられない。
 意味が、訳が分からない。

 とにかく、部屋に戻ろう。
 一旦落ち着こう。
 考える事が出来ないのなら、考える事が出来る様になる努力をしよう。
 これはきっと、俺一人で考えるべき事で……

 覚束ない足取りで自分の部屋へ戻る。
 先程まで過ごしていた筈の俺の部屋は、見慣れない、見た事も無い光景だった。
 こんな場所で過ごしていた記憶は無い。
 こんな場所で毎朝目を覚ましていた記憶が無い。

 そして……

「ふふ、兄さんったら……そんなに焦って、何処に行ってたんですか?」

 俺の部屋で一人微笑む千雪は、見た事もないくらい笑顔だった。



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