環いろは「桜子ちゃんが二人になっちゃった?!」
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45: ◆LXjZXGUZxjdx[sage saga]
2019/12/01(日) 19:10:18.37 ID:5yCClcPC0
ワームホールに足を踏み入れる。
散らばるキュゥべえの残骸を払い除けて進む。
いろはの気配に向かって、手を伸ばす。
しかし奥に入れば入るほど重力が強くなる。
強力な磁気と電磁波で平衡感覚は失われ、容赦ない電撃が体の自由を奪う。
骨は割れ、肌は割け、筋肉は千切れ、胴体は潰れ、首は砕け、手足は折れる。
それでも足を進める。それでも手を伸ばす。
いろはの気配を頼りに前へと進む。
いろは。いろは。
いろはに会いたい。いろはに会いたい。
それなのに、進まなくなる。体が壊れすぎた。重力が強すぎた。動けない。
あと少しでいろはに会えるはずなのに。
嫌だ。嫌だ。こんなところで止まりたくない。死にたくない。やっとここまで来たのに。あともう少しなのに。あと少し。
お願い。あと一歩進ませて。神様お願い。助けて。私をいろはに会わせて。もう目の前なの。
その目の前に羽根が舞い落ちてくる。上も下もないこの空間に、フワフワと羽根が舞い落ちる。綺麗な白い羽根。
いつか見た光景。300年以上前にいろはとやちよが一緒に空を飛んだ時に見た光景。
声が聞こえる。いろはの声ではないけど、いろはみたいに優しい声。
耳が機能しないこの空間で、その声はわたしの心に直接語り掛けてくる。
『貴女ならここを通してあげられる』
『魔女で終わる悲しい結末を変えられるなら、変えてあげたい』
『ただし、平行世界へ渡るのはこの一回だけにして。あらゆる因果の糸がいろはちゃんに集中しちゃう。その先にあるのは死ぬより辛い運命。それを背負うのはわたしだけで十分だから』
『一回だけできるレコードの巻き戻し。貴女に託すよ』
動かない私の体。
誰かがそっと、優しく、背中を押してくれた気がした。
いろは「うっ・・・。灯花ちゃん、こんなにたくさんの装置を果てなしのミラーズに運び込んでいたんだね・・・」
いろは「それじゃあ桜子ちゃん、ちょっとの間この装置を守っててくれる?」
桜子「 |・・・・いろはっ| 」
いろは「ん? 桜子ちゃん呼んだ?」
いろは「えっ、でも今桜子ちゃんの声がしたような・・・」
桜子「 |・・・いろはっ| 」
いろは「・・・・えっ? あれ? ええっ?!」
桜子「 |やっと会えた・・・いろは・・・| 」
いろは「桜子ちゃんが二人になっちゃった?!」
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