白雪千夜「足りすぎている」
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232:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 22:18:04.32 ID:1/ZkFkMM0
「彼らの指摘はもっともだった。
 高垣楓など、実績も話題性もあるアイドルを起用した方が一定のクオリティを担保できるし、宣伝効果も高い。
 反対に、鳴り物入りで起用した新人が大舞台でし損じるようなことがあれば、我が社はボロボロに叩かれるだろう」
 
「それが分かっていながら、なぜ?」

「海外の346グループの支社で仕事をしていた時、玲音と知り合った」


 カップを置いて、常務席の奥にある窓の向こうに広がる街の灯りを見つめる。

「経営者として経験と実績を積んできて、自分なりに要領を掴んできた頃のことだ。
 他社に所属していながら、フィールドを選ばず自由に活動していたオーバーランクを、何としてもイベントに呼びたいと思った私は、出会ったその日に会社に招き入れ、商談を持ちかけた。
 提示した額は、私が考える相場の50倍は下らないものだ。
 どれだけコストがかかろうと、それを補って余りあるリターンを必ず彼女はもたらすはずだと考えた」

 フッ、と常務が笑った。
 この人の口角が上がったのを初めて見た。

「観客と楽しむことができるステージを用意してもらえるならそれでいい……彼女はそう言った。
 つまり、ノーギャラだ」



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